鬼ヶ鼻の岩場

 

 

                   

                   岩場概説

 鬼ヶ鼻の岩場は大きく三つのブロックに分けられる。一つは、直接展望台から切れ落ちる北東壁および南東壁、向かって左下にある高度差15m程の壁(左下岩壁と仮称、椎原から鬼ヶ鼻への登山路の横に見える部分)、向かって右下にある高度差20m程度の岩壁(右下岩壁と仮称)である。この他、沢伝いに100m程北側の斜面を下ったところにも10m程度の岩場が数カ所出てくるものの、わざわざ登るほどの所かどうか。
 各ブロックとも随分長い間登られていなかった様だが、2011年になって、北東壁、南東壁、左下岩壁に数本のラインが整備され、ほとんど手がつけられていなかった右下岩壁にも新しいラインが引かれた。その結果、合計ルート数は30本を越えた。
 この岩壁群は堅い花崗岩より成り、岩質が良いものの、北面した岩場特有の問題点を抱えている。それは湿気の多さから来る、灌木と苔の繁茂である。これを落とせば、随分すっきりするのだが、登山者が足繁く訪れる場所であるから、おおっぴらに土木作業を行うわけにも行かない。それでも、ステンボルトの設置を含め、一応の整備がすんだので、この場で紹介したい。しかし、せっかく整理しても、利用者がいないと、再び藪に埋もれてしまうことになりかねない。
 この岩場は、降雨後の乾きが悪く、雨が降った後、2〜3日は登れない。また、1、2月は、積雪の為に取り付くことが出来ない。一方、高度800mに位置し、日光の直射を浴びないので、夏は涼しくて、登りやすい。展望台の岩場、右下岩壁の各ルートは岩壁基部を走る横断バンドから取り付くことになるが、バンドの幅が狭い部分があり(50cm)、下は10m程切れ落ちているため、 慎重な行動が要求される。最近、特に危険な場所にはフィックスロープを設置したので、ルート案内になると共に安全性が確保された。

           

◯展望台北東壁

  

 

                    岩場概説

 鬼ヶ鼻展望台北東面はスッパリと切れ落ちた断崖になっており、上から覗くと50mに近い高度差を有する様に感じる。しかし、岩壁部の実高度差は25m程度であり、登攀の対象となる部分は20mである。それでも、中間が抉られたように凹み、壁全体がハングしているので、なかなか迫力がある。この壁は昭和30年代頃より登られていたが、おそらく人工登攀の対象であっただろう。至る所に、当時のボルト、ハーケンが残されているものの、いずれも腐食が激しく、とうてい使用には耐えられない。
 展望台の右側からバンド伝いに岩壁の上に出ることが出来、このバンドが右ルート、左ルートの終了点と
なる。各ルートの取り付きに出るには、このバンドからアプザイレンするのが最も早い。支点として、ステ
ンボルトが2本埋めてある。18m下れば、左ルート、右ルートの取り付き、そのままザイル一杯25m下れ
ば横断バンドに達し、そこから歩いて南東壁諸ルートの取り付きに出る。一方、椎原への登山道を20mほど降りた地点から、岩場の裾を回り込んで横断バンドへ降り立ち、南東壁の下を回り込んでセンタースラブの取り付きに出る事も出来る。さらに横断バンドは続き、北東壁の下を通って上部の樹林帯へ至る。一方、途中から下って右下岩壁の下へ出ることも出来る。しかし、足下が不安定であるから、通行には十分な注意が必要である。

 

                    ルート解説                   

 1.    右ルート(18m、5.10b、ボルト6本)
 正面右寄りに取り付き、ステップを越えた後、右に出て直上、3本目のボルトの上から左に移ってクラッ
ク伝いに登る。ここは空中に出ていく感じがして度胸がいる(そのまま直上も可能だが、ムーブとしては左へ出る方が面白い)。後は楽になるが、最後の部分が被り気味で怖い。バンドに這い上がって終了。

 2.    左ルート(18m、5.11a、ボルト5本)
 基部の大岩上から正面左寄りに取り付き、帯状の小ハングを越える。ここから真上の凹状部を目がけて登
る。凹状部は被り気味で悪いが、指先が掛かる縦クラックが走っているのでこれをホールドにして強引に身体を上げる。指先の力が弱いと体勢の保持が難しい。抜け口で右足のヒールフックを使うと、何とか上のガバホールドに手が届く。核心部のボルト間隔が遠いので、注意。後は右にラインを取って右ルートへ合しバンドに這い上がる。

 3. くの字クラック(22m、5.10a、ボルト9本、センタースラブの分を含む)             取り付きはセンタースラブと同じ位置。一段上がった後、右の凹角伝いに登り、左開きコーナーの奥に入るクラックを伝う。ハングに押さえられた所で右上するクラックをたどり、最後はオーバーハングの切れ目を左に抜ける。右上クラックはフットホールドが乏しく、腕力頼りのトラバースとなる。オーバーハングの乗り越しは、脚の下が無く、高度感がすごい。          

 4. センタースラブ(20m、5.7、ボルト6本)                            以前は樹林帯だった。被り気味の凹角から取り付く。入り口にガバホールドがあるが次の一手が遠く手を焼く。ポイントはここだけ。凹角を越えると容易なスラブとなり、これを直上する。最後の部分で左へ出、灌木帯に入るとバンドへ達する。バンドの端に灌木が生えており、この木でトップロープを取る事が出来る。右ルート、左ルートの取り付きへのアプローチとして便利であるだけでなく、南東壁の諸ルートがこのラインに合流してくる。

 5.   凹角(22m、凹角部分10m、5.9、ボルト3本、カム1個)
 被り気味の凹角を登るルート。凹角に入る最初から微妙な体勢を強いられる。凹角の奥に走るクラックを
伝い、難しくなった辺りで、左にフレイク状のガバホールドが出てくる。最後は右に移って、右のカンテをホールドに利用する。また、上部でキャメロットNo1がきっちりとセットできるクラックがある。凹角を抜けた後は、センタースラブへ合流する。または、右の大石の上(右ルート、左ルートの取り付き)に出て、ピッチを切る。

 6.   秋の空(22m、センタースラブまで10m、5.11a、ボルト5本)
 凹角の左の側面、被ったフェイスを凹角伝いに登る。2本目と3本目のボルトの間が核心部。奥にクラックが入っているが、体勢の保持が難しく、身体が引きはがされそうで怖い。フレイクを掴めば楽になり、小テラスへ這い上がる。ここで小さなアンダーホールドに耐え左手をぎりぎりに伸ばすと、水平クラックに指先が掛かる。凹角を抜けた後は、センタースラブへ合流する。

 

◯展望台南東壁

                     岩場概説

 北東壁の左側部分はカンテラインを挟んで直角に折れ曲がり、南東に面している。この部分にも数本のラインが開かれたので、北東壁から独立させ、展望台南東壁と呼ぶことにする。比較的傾斜が緩く、初級者でも十分楽しめる部分である。南東壁の各ルートを登れば、いずれも樹林帯に走るバンドへ飛び出す。

 

                     ルート解説

 7.  左方カンテ(22m、5.9、ボルト6本)
 北東壁と南東壁を分けるカンテ状に取られたライン。カンテ左のフェイスより取り付き、直上、一段登った所から、オーバーハングを抱きかかえるようにして右上、緩傾斜に出る。ついで被ったカンテを越えるが、ハンドホールドがしっかりしているので難しくはない。いったんバンドへ立った後、右寄りに垂壁を越える。この後は、センタースラブに合流する。

 8. 梅雨の晴れ間(22m、5.7、ボルト5本)
 取り付きは左方カンテと同じ。2本目のボルトにクリップ後、小ハング下を左へトラバースして凹角へ入 り、これを伝う。上部でセンタースラブと合流する。一部、青空へとラインが重なっている。

 9. 青空へ(22m、5.10b、ボルト8本)
 取り付きは左方カンテと同じ。1本目のボルトから小ハング目がけて直上する。ガバホールド伝いにハングを越えるが、ハング上のホールドが甘い。いったんバンドに立ち、ここから凹状部を直上。途中からオーバーハングを左に越え、フェイスへ出る。上はハングに押さえられるので左へトラバース。カチホールドが乏しく結構悪い。ここが核心部。ハングを回り込んだ後、凹角をたどる。

 10. 左フェイス右ルート(9m、5.10a、ボルト5本)
 左フェイスは登山道すぐ横の小フェイスである。右ルートはフェイスの右側をたどるライン。中間部は甘いピンチホールドを利用しての不安定な登りを強いられる。また最後の部分もハンドホールドの掛かりが悪くて苦労させられる。

 11. 左フェイス左ルート(9m、5.8、ボルト4本)
 フェイス左寄りのフレイク状ホールドを利用して一段上がり、クラック伝いに直上する。最後の部分で右へトラバース気味に抜ける。ここが核心。

 

 

 

 

◯左下岩壁

                      南東フェイス

 

                      北面クラック

 

                       岩場概説

 椎原から鬼ヶ鼻への登山路を辿り、鬼ヶ鼻の50m程手前の右側に高度差15m程のフェイスが見える。こ
れが左下岩壁である。このフェイスを右に回り込むと凹角となり、巨大なオーバーハングによって上部が塞
がれている。更に右側(北側)に回り込むと、10m程の樹林帯の上に6〜7mの被り気味の壁が開け、中央に顕著なハンドクラックが認められる。
 登山道から見えるフェイスの右側の大ハングは人工登攀で登られていたが、そのラインのフリー化は無理の様だ。また、残置ボルト類は完全に腐食している。登山道から見えるフェイス左側のクラックから取り付いて、右上するラインは初心者向き。フェイス右側のフレイクを伝うルートは、すっきりしたラインだ。取り付き部分が悪く、ここをどうこなすか。凹角右の側壁は高度差8m程度、これは容易すぎる。また終了点は岩壁途中で、そのまま右の樹林帯へ逃げなければならない(岩壁頂上へのラインは、少なくとも私には無理)。北側へ回り込んだハンドクラックは被り気味だが、クラック内にガバホールドが多く、ぐいぐい登ることが出来る。2010年5月に凹角右の側壁を登った後、このクラックへ繋いだという記録が見られる。
http://kawahanakokoro.web.fc2.com/20100509onigahana.html参照)。

      

                     ルート解説

 1. 横断ルート(13m、5.6、ボルト3本)
 南東面のフェイス(登山路から見えるフェイス)左寄りのクラックから取り付き、右斜め上にフェイスを
横断していく。3本目のボルトから直上し登攀終了。途中から、直登ルートの上部に繋ぐことも出来る。その場合のグレードは5.10a。

 2. 直登ルート(15m、5.11a、ボルト6本)
 南東面フェイスの右寄りに入るフレイク状のクラックを登るライン。登り始めの部分が核心であり、フレイクの左下から取り付き、安定したフレイクを掴むまでが悪い。最後の部分で、右へトラバース、ハングの上に出る。下はスッパリと切れ落ち、少々怖い。途中の逆くの字クラックを利用してフェイス右端まで出、クラック伝いに最後の垂壁を越える。核心の動作を枝村氏に教わったおかげで、ルートが完成した。フレイクは壊れるかも知れないので、取り扱いは丁寧に。

 3.   凹角右側壁(8m、5.6、ボルト0本)
 凹角の右のフェイスを登るライン。プロテクションは凹角奥のクラックを使ってカムで取れる。右のカン
テを越えたところが、終了点。ここから右へ水平クラックが続いているので、これを辿り、樹林帯へ入る。終了点から、直接頂上へ登るラインは可能性が少ない。

 4.   クラック(6m、5.10a、カム)
 被り気味の壁に食い入るハンドクラック。クラック内にフレイク状のガバホールドがあるので、レイバッ
ク気味に登る事が出来、見た目よりも易しい。最後が被っていて、腕力と度胸が必要となる。No1〜2程度のサイズのキャメロットが素敵に利くので楽しい。ムーブ的には5.10aだが、カムをセットする苦労を考えると1ランク、グレードアップするだろう。

 

           

           

 

 ◯右下岩壁

 

 

                 右下岩壁積み木フレイク付近

 

                   右下岩壁北西面

 

                     岩場概説

 登山路からは、直接この岩壁を見ることが出来ず、その存在自体がほとんど知られていない。しかし、鬼ヶ鼻の岩場では最大のスケールを持っている。岩壁基部に1本だけではあるが、腐食したハーケンが残されていた事より、かつて、ルート開拓の試みがなされたのは確実である。しかし、岩壁途中には、全く残置ピンが見られないので、岩壁上部までダイレクトに抜けるルートは開かれなかったと思われる(岩場の整備を始める前は、緩傾斜帯に灌木が茂っていたため、この灌木伝いに登った可能性はある。ただし、岩壁部分はボルトを打たずに登れるところでは無い)。その後、米澤によって本格的開拓が行われ、膨大な土木作業の後、2012年6月までに17本のラインが引かれた。
 最大高度差は20m程度、幅は70m程度のスケールだが、中央部は壁全体が被っており、のしかかって来る様な迫力に圧倒される。壁は大きく三つの部分に分けられ、左側の部分は北東に、中央部分は北に、右側部分は北西に面している。北東面は高度差15m程度、現在2本のラインが引かれている。中央の北面は高度差15m程度、ここにも7本のラインが存在する。
 北西面は最もスケールが大きく、高度差20m、幅40m程度、10本のラインが存在する。北西面左側部分は、下部5mが急傾斜をなし、中間部5mが緩傾斜帯となっている。緩傾斜帯はどこでも登れるので、必ずしもルート図通りのラインをとる必要は無く、下部を登った後は、適当に上部のラインへ繋げば良い。上部の10mは被り気味の部分も出てきて、核心部を成す。北西面左側部分の上は、傾斜したバンドとなっており、各ルートの終了後はこのバンドを左へたどって、灌木帯へ抜ける。大凹角を挟んだ右側部分は、いくつか容易なラインが引かれ、初心者も楽しめる所である。この他にも、2〜3本のラインが考えられるが相当に難しそうだ。
 右下岩壁は上部からは全く見えないので、アプローチが分かりにくい。鬼ヶ鼻展望台の20m程手前の尾根道から西に向かって降り、右寄りに50m程樹林帯を下っていくと、いきなり岩壁の上に出る。取り付きへ出るには、灌木をピンにアプザイレンするのが手っ取り早い。岩壁の左右から樹林帯を下って取り付きに回り込むラインも存在するが、分かりにくいので、一度、アプザイレンで下った後、登ってラインを確かめた方が良いだろう。どちらも、足場は良くない。

 

                   ルート解説

 1. 木漏れ日スラブ(15m、5.10b、ボルト4本)
 右下岩壁左端に引かれたライン。三角形をした小オーバーハング目がけてスラブを登り、ハングに抑えられたところから、右にカンテを越え、緩いフェイスに出る。後は問題なく、灌木帯に出て終了。中間部分は見た感じよりも難しいので、舐めてかからないこと。

 2. ハング下のトラバース(18m、5.10d、ボルト8本)
 取り付きは、オーバーハング左端の下。クラック伝いに第1のハングを越える。ついで第2のハング下を右へトラバースしていく。トラバースは一見不可能に感じられるが、素晴らしいアンダーホールドがあり、これを使えば何とかなる。ただし、フットホールドが不安定な上に、下にも大きなハングが控えているので、少々怖い。ピンはハング上に設置してあるが、クリップする体勢が悪い。トラバースを終え、右のフレイク状のホールドを頼りに伸び上がり、突き出た板状の岩を掴む。これを抱え込むようにして左から乗り越し、さらに、悪い凹状部を越えてスラブに出る。この上は問題なく、最上部で木漏れ日スラブと合流する。

 3. 最後の一手バリエーション(18m、5.11a、ボルト7本)
 最後の一手の左側、最も被っている部分を登るライン。取り付き部分、右のガバを利用して左手でフレイクを取る動作が下部の核心。上部で最後の一手と合流する。最後の一手と比べて、被りが大きいので、腕の負担が厳しい。

 4. 最後の一手(18m、5.11a、ボルト7本)
 北面した部分の左側に引かれたライン。右上に一段上がった所から、フェイスに取り付く。全体が被っているが、フレイク状のガバホールドが続いているので、ぐいぐい登ることが出来る。帯状のハングに突き当たったところで、左へ移り、これを越える。ハングにはしっかりしたホールドがあるものの、ハング上のホールドが甘く、身体が放り出されそうで怖い。登って爽快感のあるルート。 

 5. 中央チムニー(12m、5.10c、ボルト3本)
 被ったチムニーへ続く奥まった凹角から取り付く。傾斜は急だが、ガバホールドが多く、難しくはない。ハングを左から回り込むようにして越え、チムニーへ入る。チム ニー内では頭を抑えられるが、奥に入 るクラックを利用し左の側壁を登る。脚の下はただ空間があるのみ宙に浮いたような感じがして恐怖感は相当な物がある。最後は空中に乗り出すような体勢でチムニーを抜ける。チムニー登りのテクニックを持たないと、非常に悪く感じるだろう。No. 0.75~2程度のキャメロット3〜4個があれば、奥のクラックで支点を取る事が出来るので、チムニー内にボルトは打っていない。

 6. 中央チムニー・エスケイプ(15m、5.9、ボルト6本)                       下部はチムニーと同じライン。8m登った所にあるハングを左から回り込むようにして凹角へ入り、スラブをたどる。

 7. センターライン・左(15m、5.10b、ボルト7本)
 中央チムニー下部凹角の右のフェイスをカンテライン沿いに登る。ホールドはしっかりしているが、体勢の保持が悪い。8m登った所で右のラインと合流し、5.8のスラブをたどる。             

 8. センターライン・右(15m、5.10c、ボルト6本)
 取り付きのフェイス2mを登り、少し遠いが素敵なフレイクをアンダーホールドに利用して、右のスラブへ移る。ここから、被り気味のフェイスを連続する小フレイクを利用して越え、左のバンドへ立つ。ここは体重移動が難しい。ここで左のラインと合流し、そのままスラブをたどり、灌木帯へ入る。

 9. センターフェイス(15m、5.10d、ボルト7本)
 下部凹角左側のカンテ状より取り付く。一段上り、左の緩斜面に立ち込むのが第1のポイント。緩斜面を左に抜けて一旦テラスへ立つ。ついでスラブを右上し、被り気味のフェイスを抜ける。ハング下のバンドに立ち上がり左へ移るとセンターラインと合流する。好ルートの一つ。

 10. 下部凹角(8m、5.8、ボルト2本)
 北西面左端に位置する凹角をたどる。ただし、凹角の終点から先に繋ぐ適当なラインが無く、下半だけのルートとなってしまう。取り付きからフレイク状のクラックを利用した強引なレイバックで、凹角をたどる。凹角を抜けたところで、ハングに抑えられるので、右に斜上凹角をたどり、緩傾斜帯に出て終了。

 11. 恐怖のテラス(20m、5.10b、ボルト8本)
 取り付きは、基部バンド左端の斜上凹角。凹角を右上し、緩傾斜帯に出る。左寄りにラインを取り、凹角へ入る。一旦、左のテラスに立った後、再び凹角へもどる。フィンガークラックを利用して登り、ハング下の小テラスへ這い上がる。テラスへ這い上がる部分は、体が後ろへひっくり返りそうな感じになり、かなり怖い。ついで、しゃがんだまま左へ移動し、カンテを左へ越えてスラブへ移る。スラブを左へ移動し、垂壁を左寄りに越えて灌木帯へ入る。ハング下テラスは、濡れていることがあり、その場合は、進退窮まりかねない。

 12. ハイステップ(20m、5.10c、ボルト5本)
 凹角をたどり、一端、おむすび型の岩の上に立つ。ここから緩傾斜帯を登って、浅いクラックの下に出る。クラック沿いに小ハングを越えて一段上り、上のハングに突き当たったところで、ハング沿いに右へ逃げる。最後は、積み木フレイクと合流して、バンドへ出る。

 13. 積み木フレイク(20m、5.10a、ボルト5本)
 顕著なワイドクラックを抜けた後、積み木状岩を目がけて直上する。被り気味の凹状部を一段上り、積み木状岩左のクラックを利用して、左側のフェイスへ移る。フレイク状のクラック伝いに登り、ハングの切れ目を抜けて、バンドへ出る。

 14. 二段フェイス(20m、5.10a、ボルト5本)
 容易な階段状の部分を登り、直上する。上部壁に突き当たったところで、2mの垂壁を越え、続く垂壁を右上するラインを取って乗り越える。左手の甘いホールドでいかに耐え、右手を伸ばすかが核心。この部分は、リーチが短いと苦労することになろう。ついで、凹状部をたどって、バンドへ抜ける。

 15. 大凹角(20m、5.8、ボルト3本)
 船首の様に突き出した部分を右へ回り込んだ小凹角より取り付く。凹角は垂直だが、ホールドがしっかりしているので、問題ない。緩傾斜部分を登り、上部のルンゼ状へ繋ぐ。垂壁を成すルンゼの入り口が濡れていることがあり、その場合は不安定な登りを強要される。

 16. 脚を開いて(15m、5.10b、ボルト5本)
 取り付きは、岩壁の一番低い部分。一段上のくぼみから左上する。不安定な体勢で立ち上がり、ハングを越える。緩傾斜部分を登り、大ハングの下から右の垂壁に出て、これを越える。降雨後はハンドホールドが濡れている事が多く悪く感じる。一旦テラスに立ち、右に出て快適かつ微妙なカンテ状を登る。最後は、傾斜の落ちたスラブを右へトラバース気味に登って終了。

 17. 眼鏡ハング(15m、5.11b、ボルト7本)
 取り付きから、ハングを直上する。ハングを越えると、またハングに頭を抑えられる。しゃがんだまま右へ回り込み、ハングの間の凹角をたどるが悪い。上部にはフィンガークラックが入っているのでこれを伝い、一端テラスへ出る。左のフェイスに出るラインもあるが、こちらの方が悪い。さらに被り気味の凹状部を越え、緩傾斜スラブへ出る。取り付きから面白い動作が連続し、好ルートと言える。

 18. 隠された手がかり(15m、5.8、ボルト4本)
 岩壁最下部より取り付き、割れ目を右上する。8mで凹角下のテラスへ出る。凹角を越えた所から一旦左へ出て、傾斜の落ちたスラブをたどる。凹角は、目に付きにくいホールドを見つけることが出来なければ相当に悪く感じる。

 19. 入門ルート(10m、5.6、ボルト3本)
 岩壁基部を右上し、水平バンドより取り付く。一段上がったところから右へ移動し、傾斜の緩いスラブをクラック伝いに登る。最上部で左へ出て、一段上ると終了点に付く。鬼ヶ鼻周辺では、最も容易なルートであろう。 

 

 

      

         前のページへ戻る