鯛之川千尋滝右岸スラブ概説
屋久島では、最もアプローチが短く、半日あれば登ることが出来る。傾斜の緩いスラブであって、初級向
きの岩場といえる。岩が硬く、快適であるが、地衣類が表面を覆っているために、少しでも濡れると、フリ
クションが利かなくなる。また、上部に広大な樹林帯が控えているので、雨のしみ出しが残り、帯状に濡れ
ていることが多い。
原(はろ、はるお)の手前(安房側)に「千尋滝」への案内板があるので看板に従って右手の細い道に入る。要所に設置してある案内板に従って登ると、40分程で水平林道(立派な舗装道路、原と尾之間を結ぶ
道路)に出るので、これを尾之間の方向に進む。すぐに千尋滝への道が分かれる。(なお、この林道をさ
らに尾之間の方へ進むと、石垣を組んだ造成地があり、幕営が可能である。)ここからさらに右に登ると
広い駐車場に出る。ここまで、原から約1時間。駐車場から奥に200 m 程進と展望台に出て、行き止まり
になる。ここから谷側に降りる階段状の歩道があるので、これを下り、数分で吊り橋に出る。
橋の手前から降りて、スラブをトラバースし、岩場の基部を100 m 程進むと「千々岩ルート」取り付き
に出る。他の3ルートには、川を渡り(よほど水量が増えてなければ飛び石伝いに渡ることが出来る)対岸
の歩道を上流に向かって進む。千尋滝直下の取水口を渡ったところが、「梅津ルート」の取り付きである。
取水口より下流の二カ所で岩伝いに川を渡ってスラブの末端から取り付くのが、「鯛焼きルート」と「ス
ペシャル鯛焼きルート」。いずれのルートも展望台から15分程度で取り付きに立てる。
どのルートも、終了点から藪の中を数分登ると、本富岳への登山路に出るが、道を横切るかたちになって
分かりにくいので行き過ぎないように注意する必要がある。道なりに下れば、10分程度で展望台に帰り着
く。
ルート解説
・「鯛焼きルート」(235 m、7ピッチ、5.8、A0、所要3時間)
1ピッチ(35 m、5.8、A0)
水取り入れ口の20 m程下の岩より取り付く。A0(ボルト3本)で2 m上り、右のバンドへ移る。凹状
部を直登、20 mでボルトが打ってある。長石の結晶をホールドに更に右上し、不安定なビレイポイント
でピッチを区切る。
2ピッチ(40 m、5.7)
スラブを直登。ザイルいっぱいで2つ並んだ左のブッシュに入る。
3ピッチ(40 m、5.7)
そのまま2つのブッシュの間のスラブを直登。ザイルいっぱいで右のブッシュに入る。
4ピッチ(25 m、5.7)
スラブを直上。スラブが終わり、いったんブッシュ帯となるので、左のブッシュ帯へ入り、5 m程トラ
バース。ハング帯の下へ出る。
5ピッチ(30 m、5.7)
ハング気味の壁(5 m)を越え、フェイス(15 m)を登りブッシュ帯へ入る。右へ5 mトラバースす
ると上部スラブの下へ出る。
6ピッチ(40 m、5.6)
白いスラブの真ん中を直登。
7ピッチ(25 m、5.5)
そのままスラブを直登。ブッシュ帯へ入り、藪こぎ五 m で垂直な壁の下へ出て登攀を終了する。
左へ潅木帯をトラバース後、左上すると10分で登山路に出る。
「スペシャル鯛焼きルート」(120 m、4ピッチ、5.7、A0、所要2時間)
1ピッチ(25 m、5.7、A0)
鯛焼きルートの更に20 m程下流の岩より取り付く。A0 (ボルト2本)で3 m登り、スラブを直登。
いったんバンドへ出て更に直登する。
2ピッチ(30 m、5.7)
スラブを直上。広いテラスでピッチを切る。
3ピッチ(35 m、5.7)
スラブを直上。小さなステップを越える所が核心。
4ピッチ(30 m、5.7)
スラブを直上。ブッシュ帯手前で長石の結晶が無くなり、際どいバランスクライムを強いられる。樹林
帯に入った所で鯛焼きルートに合流する。
「千々岩ルート」(235 m、7ピッチ、5.8、所要3時間)
1ピッチ(35 m、5.7)
吊り橋から50 m右岸をトラバースし、取り付き点に出る。7 mの垂壁を越え、スラブを右上する。バ
ンドへ出てピッチを切る。
2ピッチ(25 m、5.6)
頭上の2つのブッシュの間を目がけスラブを直上。
3ピッチ(40 m、5.7)
ステップ目がけスラブを直上。ステップを越える所が核心。更にスラブを直上する。ピンが遠く不安
定。
4ピッチ(35 m、5.8)
スラブを直上。傾斜が強くなるが、ホールドがしっかりしているので悪くはない。
5ピッチ(40 m、5.6)
スラブを直上。
6ピッチ(30 m、5.6)
スラブを直上。濡れていることが多い。
7ピッチ(30 m、5.5)
容易なスラブを直上。垂壁の下の草付きに出て終了。
終了点から左へトラバース気味に潅木帯を登ると5分で登山路に出る。
「梅津ルート」(375 m、9ピッチ、5.9、所要3時間)
1ピッチ(35 m、5.8)
水取り入れ口より取り付く。2 mの垂壁を越えスラブを直上。
2ピッチ(25 m、5.6)
スラブを右上。小テラスに出る。
3ピッチ(40 m、5.8)
そのままスラブを右上。右に細く伸びるブッシュラインでピッチを切る。
4ピッチ(30 m、5.8)
右上の独立したブッシュ帯目がけスラブを右上する。スラブの途中でビレイを取る。
5ピッチ(35 m、5.7)
更に右上の独立したブッシュ帯目がけスラブを右上し、ブッシュへ入る。
6ピッチ(20 m、5.5)
ブッシュを上まで登り、4 mのスラブをトラバースし右の小ブッシュ帯の上部へ出る。
7ピッチ(30 m、5.9)
右のスラブへ出て、トラバース気味に右上する。ホールドが小さくこのルートの山場である。
広ラブの真ん中でピッチを切る。
8ピッチ(25 m、5.6)
そのままスラブを右上。傾斜が落ち容易になる。
9ピッチ(35 m、5.5)
傾斜の緩いスラブを右上。スラブ最上部の潅木帯へ入り登攀を終了する。
右へ下降気味に灌木帯に入り、右へトラバース後直上すると5分で登山路に出る。