二又川右俣スラブ

 

  

                志戸子岳東壁
志戸子岳東壁

               二又川右俣右岸スラブ   

                二又川右俣右岸スラブ概説

 尾之間付近から本富岳方面を見上げると、二又川上流に、扇形をした急峻なスラブの赤黒い岩肌が望まれる。このスラブの中央を直上していく爽快なライン取りがされており、本富岳周辺では「屋久島フリーウェイ」と並ぶ中級者向きの好ルートである。現在の所、2ポイント人工登攀が混じっているが、完全フリー化も可能だと思われる。アプローチとして、二又川右俣(オナゴニタ)をつめていく。林道から一時間程度で、取り付きに立てる。

                     ルート解説

二又川右俣右岸スラブ「大回転」(255 m、A1、5.10b、所要3時間)

1ピッチ(25m、5.9、ボルト5)
 スラブの基部を左上するルンゼを30 m程上がった所が取り付き点となる。ホールドの乏しいスラブをひ
 たすら直上。不安定な足場でボルトにぶら下がる様にしてピッチを区切る。

2ピッチ(40m、5.10a、ボルト4)
 さらに直上。傾斜が増してくるので難しくなる。遠いボルトに耐えながら30 m登ると最後で楽になり、
 安定したバンドに出る。

3ピッチ(30m、5.10b、ボルト4)
 ここから急に傾斜が増してくる。スラブを直上すると、帯状に横たわるステップの左端部に突き当た
 る。ボルトを頼りに1 mのステップを越えて、急峻なスラブを右上にトラバースすると不安定なビレイ
 点に出る。

4ピッチ(40m、A1、5.10a、ボルト7)
 手がかりのほとんど得られないスラブを直上し、ボルト3本を使用して3 mのステップを越える。斜めの
 草付きテラスに出てピッチを切る。傾斜していて不安定だがこれでもルート中で最も広いテラスであ
 る。

5ピッチ(40m、5.10a、ボルト5)
 4 mのフェイス状を越えると上部は楽になる。ホールドの豊富なスラブを左上の草付きを目指して登
 り、右から回り込んでこの上に出る。さらに直上。

6ピッチ(40m、5.7、ボルト1)
 傾斜の落ちたスラブを直上する。ルート中、唯一の気の抜けるピッチである。

7ピッチ(40m、A1、5.9、ボル5)
 容易なスラブを右上し、ボルト2本を使用して2 mのステップを越える。この上が蒲鉾岩で急に傾斜が増
 す。長石の結晶を拾いながら5 m程登ると傾斜が落ちて、登攀終了点に付く。

             

                 二又川右俣右岸スラブルート図

                   

         志戸子岳東壁

                    志戸子岳東壁概説

 街からも直接望むことが出来、距離的に屋久島の中心地、宮之浦に近いのだが、実際のアプローチは結
構長い。また、壁自体はかなりのスケールを持つものの、ブッシュで区切られているため、登攀対象とな
る部分は、意外と短い。また、現在の所、ルートの殆どがボルト連打の人工登攀に終始する。しかし、熟
練者ならば、一ピッチを除いた部分は全てフリーで登れるような感じがする。そうすれば相当に困難なス
ラブ登りのルートとなろう。ベースとしては宮之浦林道が志戸子沢を横切る地点の広場が適当。ここから
沢を詰める。取り付きまで迷わなければ1時間半程度。迷えば屋久島の原生林の中であるから、行き着け
るかどうか保証の限りでない。

                     ルート解説

志戸子岳東壁「黒稜会ルート」(145m、A1、5.9、所要3時間)

1ピッチ(30m、A1、ボルト10)
 5mの垂壁をフリーで越えて、ボルト伝いに右上し、いったん羊歯の生えた外傾テラスに出る。小凹角
 をたどり、再びアブミを使用して急なスラブをたどると外傾テラスに出る。

2ピッチ(20m、A1、ボルト6)
 小凹角を登り、ボルト伝いにスラブを直上する。右の草付きに逃げてこれを2m登れば不安英なテラス
 に出る。

3ピッチ(35m、A1、ボルト25)
 連打されたボルトをたどる。しだいに左に寄り、二つの草付きに挟まれたスラブをたどると、お盆の様
 に窪んだスタンスに出てピッチを切る。

4ピッチ(25m、A1、ボルト12)
 さらにボルトラダーをたどる。最後のボルトからザイルトラバースして草付きに入り、さらにボルト2
 本を使用して一段登ると、傾斜が緩む。5mフリーで登り、不安定なスタンスに出る。

5ピッチ(35m、A1、ボルト6)
 少しは傾斜が落ちるので、フリーの要素が多くなる。上部は右側の垂壁に突き当たるので、これを左に
 巻く様にラインをとり、灌木帯に飛び込む。

 下りは登ったラインをアップザイレンで下る。

   

                       志戸子岳東壁ルート図                   

 

                湯川(ゆーご)の滝

                    湯川の滝概説 

 湯川の滝は高度差100 mのV字型をした岩溝を2つ連ねて、迫力のある姿をみせる。湯泊林道を上がっ
て、高度190 m付近、林道が一番川に近くなった地点より、川に下る。不明瞭ながら、踏み跡があるで、
下降には問題ない。滝は完全な岩登りとなるので、それなりの技術が要求される。また、雨が降ると、急
速に増水する事があり、十分な注意が必要とされる。


                     ルート解説  

湯川の滝(350 m、5.8、A1、所要3時間)

1ピッチ(20 m、A1,ハーケン3)
 水流の右から取り付く。傾斜は緩いものの、磨かれた花崗岩は滑っていて非常に登りにくい。一段登っ
 た後、チムニー状の部分を越えてバンドに這い上がり、更に左のステップを乗り越える。スラブをたど
 ると、広い(40 mx10 m)釜に阻まれる。

2ピッチ(45 m、5.8、ハーケン3)
 釜の奥には深くえぐれたV字状をなして狭い岩溝が競上がる。釜を泳ぎ、左岸の小沢状の部分に取り付
 く。5m程沢を登った所からハーケンを打って左にバンド伝いに5 mトラバースすると安定したテラス
 に出る。

3ピッチ(30 m、5.8、ボルト1、ハーケン5) 
 バンド状を左上して行く。最後は樹林帯との境に出る。

4ピッチ(30 m、5.5)
 樹林帯との境をスラブ伝いに登る。長かったV字岩溝もここまで来るとえぐれは目立たなくなり、スラ
 ブ滝と変わる。

5ピッチ(30 m、5.5)
 さらに樹林帯との境をつめて行く。直瀑20 mの途中のテラスに出てピッチを切る。

6ピッチ(45 m、5.6、ハーケン2)
 テラスの上部は帯状のハングを連ねた垂直の壁となって切れ落ちているので、右にある階段状の岩場を
 伝い樹林帯に逃げる。この直瀑までを下部V字岩溝と考える事が出来る。

7ピッチ(15 m、A1、ボルト1)
 ここから上部岩溝が始まる。右から釜を泳ぎ、水流の右側から取り付く。右へバンド伝いに移動して、
 4mのフェイスを越えると安定したバンドへ出る。

8ピッチ(25 m、A1、5.8、ボルト2、ハーケン5、フレンズ1)
 右のチムニー状の凹角に取り付き、これをたどる。15 m登り次第に狭くなって登れなくなった所から左
 へ草付きの混じったフェイスを左上する。やがて安定した小テラスに着く。

9ピッチ(20 m、5.7、フレンズ1)
 右の凹角を登って樹林帯との境に出る。スラブをたどると傾斜が落ちてくる。下からでは30 mと見えた
 斜瀑はさらに長い一本の滝(上部岩溝)の末端をなしていると見なす事ができる。

10ピッチ(35 m、5.6、ハーケン2)
 水流のすぐ横のスラブをたどって安定した大テラスに出る。ここまでが上部岩溝と考えられる。

11ピッチ(25 m、5.8、ハーケン2)
 上部は8mの滝となり、小さいながらも釜を持つために正面からは取り付けないので、右手の5mの階
 段状の岩場を登ってクラックを抜ける。いったん樹林帯に出て、滝の上に回り込み、大きな釜の縁に出
 る。

12ピッチ(40 m)
 正面は8m程の滝となって、一気に水を落としている。右のリッジ状をたどって樹林帯に入る。樹林帯
 も傾斜が強く不安定なのでこのピッチまではアンザイレンして行動すべきであろう。この滝の上にアプ
 ザイレンで降りる。

 大岩が転がる河原をつめていくと、20分程でいきなり大きな釜に突き当たる。奥には左より7m、5m
 の二段の滝が落ち込んで来る。

13ピッチ(25 m、5.6)
 釜を泳ぎ渡り、滝の水流の右に這い上がる。滝は傾斜が無く簡単に越える。ここからは、遡行終了点で
 ある取水口(高度390 m)まで5分とかからない。

   

     

                      湯川の滝概念図

 

         大川(おおこ)の滝

                     大川の滝概説

 豊富な水量を誇る落差80mの滝は、直下まで車が入ることもあって、屋久島観光の目玉となっている。二つの水流の中間に2本のラインが引かれているが、水量が多い時には、とても登れない。常に水を被るために、ボルト等の腐食が激しく、再登する場合には、十分な数のハーケン、ボルトを持参する必要があろう。

                     ルート解説

①「大阪わらじの会ルート」(130m、Ⅳ、A1)

 滝の中央に露出する岩壁の中央部より取り付く。シャワークライミングを交えて35m登り、ピッチを切る。被った岩を越え、クラックの多い岩をフリーで35m登る。溝に沿って右へ5mトラバースして上部の壁を30m登る。傾斜が落ちたスラブを30m登り、登攀は終了する。

 

②志水-小原ルート(130m、Ⅳ+

 「大阪わらじの会ルート」と同じところから取り付き、同ルートのやや右寄りを2ピッチ登った後、同ルートに合流する派生ラインである。右へ濡れた滑りやすい逆層の岩を、白く剥げた部分にそって30m登りテラスへ達する。ここから右へトラバース気味に右上し、オーバーハングに遮られたところから左へトラバースして、「大阪わらじの会ルート」へ合する。

 

 

                 鈴川左俣蛇之口滝

                  鈴川左俣蛇之口滝概説

 蛇之口滝は落差30m、その上部に100m程のナメラが続く。初登時に、10本ほどのボルトが使用されたが、それらは全て腐食しているはずである。滝の下までハイキング道路が延びており、尾之間温泉から1時間半程度。 

                     ルート解説

鈴川左俣蛇之口滝(330m、Ⅳ、A1)

1ピッチ
 取り付きは、左岸のクラックで40m登ってピッチを切る。

2ピッチ
 さらにブッシュ帯を抜ける。

3ピッチ
 滝のすぐ横を人工登攀で越えて岩溝まで登る。後は容易なナメラを4ピッチほどたどり、登攀を終了す
 る。

 

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