金山の沢筋概説

 花乱の滝を擁する滝川から坊主ヶ滝を擁する坊主川までの沢筋を金山の沢としておこう。これらの沢筋は、いずれも室見川に合流する。この部分が背振山塊の沢では核心を成す所で、滝川、坊主川は沢の規模、滝のスケールが大きく、また水流、滝の数も多い。坊主川以東の沢は花崗岩よりなり、渓谷美も併せ持っている。
 ここで背振山の沢をも含め、アプローチについて述べておかなければならない。現在、板屋峠への道の途中から車谷登山口を通り、坊主ヶ滝下まで続く林道の工事が進んでいる。沢登りの対象となる部分はこの林道の上流域であるから、林道と沢との交点から入渓するのが能率的である。しかし、林道は長尾川(広滝川)~ 僧座川間が未完成であり、工事のために小爪川以西は車立ち入り禁止となっている。従って、長尾川と小爪川との間の沢に取り付く場合は、しばらく林道を歩く事になる。この半年間、目立った工事の進捗は見られず、全線開通はいつのことになるか、見当が付かない。

 

                   金山沢筋概念図

 

滝川

滝川概説                                             沢のスケール、溯行距離、滝の数より、私はこの滝川を背振山塊のトップにあげる。さらに、源流域の藪コギも無く、本流は直接金山山頂に達するので、登って楽しい。右に支流を出しており、こちらは城の山付近に出る。全ての滝を登るならば、登攀具必携。沢筋に沿って登山路が伸びているので安心な面があるが、登山路からの落石が怖いという声を聞いた。

アプローチ                              国道263号線を三瀬峠へ向かって進み、水源地前バス停の広場に車を止める。国道を引き返し、滝川に掛かる橋を渡ったところから道標に従って金山への登山道を辿る。10分程でホテルの焼け跡に出るから、ここから入渓する。時間を稼ぎたいときには、そのまま登山道を辿り、さらに10分程の所にある花乱の滝の上から入渓する。

a.  滝川本流コース解説 A ランク
 焼け跡の手前から沢に降りると5mの滝が出てくる。早速水につかって滝を越える。その後、谷筋を詰めていくと、30分程で高度差15mの花乱の滝に出る。大昔にこの滝を直登したが、三道具、あぶみを動員しての岩登りとなり、沢登りの範疇を超えていた。また、滝の下に修験場が設けられているから、トラブルを避ける意味からも登らない方が無難だ。左の車道へ出てこれを捲く。小滝を越えながら進むと、車道と交差する。やがてゴルジュとなり、まず右岸をへつる。ハーケンが打ってあるものの、岩登りの経験が無いと怖いだろう。ついで左岸に渡って滝を越える。水量が多いとき、初心者がいるときはザイルを出すべきだろう。ゴルジュを抜けてから30分程で、10m滝の下に出る。水量が多く、なかなか迫力がある。水流の左側が登れるが、下部はシャワークライミングとなる。いったんテラスに立ち、苔が厚く生えた垂壁を登る。上部にハーケンが1本打ってあったが腐食が激しく、クロモリに打ち替えた。岩登りに自信が無ければ、車道を捲く。この後も連続して出てくる小滝、さらには小ゴルジュを越えていくと、アゴ坂峠分岐に至る。アゴ坂方面は何も無い短い沢筋である。本流はここで左へ曲がる。すぐにチムニー状の12m滝が出てくる。頭から水を被りながらのシャワークライムで抜けると沢の規模も小さくなり、滝も出てこないので、沢に沿って伸びる登山道を上った方が手っ取り早い。12m滝の上部から40分程度で金山に着く。所要時間5~6時間。また左右にいくつか支流を出しているが、何れも溯行価値は無い。

 

 

                     滝川溯行図

 

             滝川本流・花乱の滝

 

            滝川本流・第1ゴルジュ

 

             滝川本流・10m滝

 

            滝川本流・第2ゴルジュ

 

           滝川本流・12m滝

 

b.  滝川右支流コース解説 C ランク                               10m滝を越え20分程で、歩道橋が川を横切る。この10分程上流で右から沢が合流する。この沢が滝川右支流。こちらに入り、15分ほどで三つ叉となる。左、中央の沢筋はほとんど滝も出てこず、城の山付近で縦走路に飛び出す。両者とも藪が酷く、とても進められる所では無い。所要時間2~3時間。右の沢は藪は無いものの、狭い河床を歩くだけ、1時間程度で尾根に出る。下降は沢筋に沿って樹林帯を下る。

 

             滝川右支流・30mナメ

 

c.  滝川左支流コース解説 C ランク                               花乱の滝から10分程度沢添いに車道を上がると左から荒れた車道が合する。このすぐ上で左から暗い小沢が合流してくる。これが左支流である。興味が持てるほどの物とは思えなかったが、空白部を埋める意味で溯行してみた。予想通り全く面白みの無い荒れた沢筋であり、滝も出てこないから、詳しい説明は省く。途中で4箇所程度堰堤が出てきて、捲くのがいやらしい。上部は右寄りにルートを取るのが良いだろう。出合いから1時間半ほどで尾根筋に出る。不明瞭な踏み跡があるが、すぐに消えてしまうので、尾根筋を強引に北西方面に下る。1時間程度で本流に降り立つ。

d.  滝川右分流コース解説 C ランク                               10m滝の上部2〜3分の所で、右から小さな流れが合流する。これを滝川右分流と仮称する。入渓するとすぐに3m滝が出てくるが、その後は変化も無く、10分ほどで二俣となる。どちらの沢筋も溯行価値は無く、30分ほどで尾根筋に出る。溯行する人がいるとも思えないので下降路については省略する。登った沢筋を下れば良い。

 

新飼川

新飼川概説                                            地図上ではかなり興味が持てそうだが、溯行してみると小滝が出てくるのみで、溯行価値は感じられない。ウドの大木的な沢である。途中で左へ支流を分ける。沢筋に添って登山路が付いているが荒れており、下山路は花乱の滝経由が良いだろう。所要時間3~4時間   

アプローチ                                            国道263号線を三瀬峠へ向かって進み、多々良瀬バス停より橋を渡って左の車道へ入る。道なりに進むと、千石荘の手前で車道が右へ分かれる。これが林道千石線である。林道へ入り1.5キロ程で新飼川と交差する。この付近に車を止める。行きすぎると滝川に出てしまう。

新飼川コース解説 C ランク                                     右岸には荒れた車道が伸びている。入渓直後は水量も多く、期待を持たせるがいっこうに滝らしい滝が出てこないまま変化の無い沢筋を詰めていくと、車道終点に出る。ここから登山路が始まり、また、左から沢(新飼川左支流)が合流する。この後、本流は2〜3mの滝がいくつか出てくるだけで難なく金山直下の尾根筋に這い上がる。左支流は滝も少なく、藪が酷い。上り詰めると尾根上の登山路に出る。左支流を詰めた場合はこれを下るのが最も早い。登山路を登ると最後には金山に出るが、道が荒れている。

 

                     新飼川溯行図

 

            新飼川下流・4m斜瀑 2

 

             新飼川右俣・8mナメ滝

 

多々羅川

多々羅川概説                                           新飼川と坊主川の間に3本の沢が認められる。南に向かって右の沢が多々羅川、左の沢が蟹又川であり、真ん中の沢には名前が付いていない。この沢は下流で蟹又川に合流する。これらの沢は、771m峰に突き上げるのでいずれも規模が小さく、溯行する気にはなれない。それでも 調査のため全てを遡行してみた。多々羅川は全く溯行価値が無かった。所要時間2時間程度。

アプローチ                                  林道千石線入り口から0.8キロで多々羅川と交差するので、この付近に車を止める。入渓点に細い水路が付いておりこれが目印。

多々羅川コース解説 C ランク                                   入渓後10分程で沢が二つに分かれる。右の沢は水流があるが、左の沢は出会い付近が涸れ沢となっており、また倒木等で分岐点がはっきりしないために、水流を伝えば自ずと右の沢を詰めることになる。入渓後15分程度で、2mの人工滝に出る。この上で右の沢は沢筋が消えるので、30m程樹林帯を横切り左の沢へ移動する。これを詰めるが、3m斜瀑が一つ出てくるだけ、最後は急な樹林帯を登って稜線に出る。下降路が簡単に見つかるとは思えないので、適当に尾根筋を下るのが良いだろう。

 

                多々羅川・名称不明川・蟹又川溯行図

 

            多々羅川・2m人工滝

 

名称不明川

名称不明川概説                                          3本の沢の中では、一番溯行距離が長い。いくつか滝が出てくるので、多々羅川よりはましな程度。わざわざ行くほどの所ではない。所要時間2時間程度。

アプローチ                                  林道千石線入り口から0.4キロで名称不明川と交差するので、この付近に車を止める。入渓点は2本の沢が平行して伸びているが、右の水流の多い沢に入る。

名称不明川コース解説 C ランク                                 入渓後、堰堤を二つ越えたところから滝が現れるが、いずれもたいした物では無い。稜線に出ると踏み跡があるものの位置関係が分かりにくく、どの方向に進んだら良いのかはっきりしない。そのまま坊主ヶ滝登山路目がけて反対斜面を降りた方が良さそうだ。

 

             名称不明川・5m滝

 

            名称不明川・6m斜瀑

 

蟹又川

蟹又川概説                                            規模が小さく目立つ程の滝も出てこない。行くだけ無駄な小沢。所要時間1.5時間程度。

アプローチ                                  林道千石線入り口から0.2キロで蟹又川と交差する。入渓点はコンクリートの用水路風。

蟹又川コース解説 C ランク                                   入渓後しばらくコンクリートの河床が続く。堰堤を二つ越え狭い沢筋を詰めていくと3m滝が出てくる。滝らしい滝はこれだけ、30分程で林道と交差する。この後も滝は出てこないまま水流が消え、二俣に出るあたりで沢の形を失う。左の涸沢に入り適当なところから左の尾根に登ると金山への登山道に出る。ここから20分程で登山道入り口に着く。

 

             蟹又川・3m滝

 

          蟹又川・林道との交差点

 

坊主川(金山沢)

坊主川概説                                             滝川と並び称される沢であり、溯行者の数も多い。岩盤が露出した沢筋は美しく、気持ちの良い溯行が続く。二俣で本流である右俣と左俣に分かれ、両者ともいくつかに分岐して縦走路に突き上げる。核心部は下流域に集中し、二俣から上部は急激に溯行価値を減ずる。ただし、「左俣の中俣の左俣」は背振山塊北面では最大と思われる滝を要し、異彩を放っている。所要時間4~5時間。 登山者の間では「金山沢」と呼ばれており、多くの報告でそのように記載されている。ここでは、行政の定めによる「坊主川」を使用する。特記すべきは坊主川下部から西山へ向けて伸びる3本の沢筋が多くの滝を抱え、結構登り甲斐があるという事である。いずれの沢も規模が小さく水流が少ないものの、その滝の全てが直登でき、登攀嗜好の者にとっては本流よりよほど面白く感じるだろう。沢の精通者のみが知る密やかな部分と言える。

アプローチ                                  国道263号線を三瀬峠へ向かって進み、多々良瀬バス停より橋を渡って左の車道へ入る。0.7キロほど道なりに進むと、左へ「わかば苑」への道が分かれる。この道に入り、「わかば苑」を通り過ぎて進むと前述の分岐から0.9キロで右へコンクリート舗装の車道が分かれる。この道に入ると、すぐに舗装された林道を横切る。この地点のすぐ左が金山への登山道入り口である。 林道との交差を真すぐに進むと0.2キロで左へ林道が分岐するのでこの道へ入る。0.3キロで坊主川にかかる坊主川橋に出る。橋の手前に2台分、橋を渡って登った所に数台車を止めるスペースがある。

a.  坊主川下部コース解説 A ランク                                 坊主川橋の手前から坊主ヶ滝への歩道が延びている。これを辿るとすぐに坊主ヶ滝15mに出る。昔はこの滝を登ったものだが、宗教施設が出来ているので、登らない方が無難だ。あえて登るならば、水流の右側にルートを取る。難しくはないが、登攀具必携。普通は滝の右の踏み跡をたどり滝のすぐ上から入渓する。まず2条10m2段滝、続いて5m斜瀑、5m斜瀑、10m斜瀑(滑り台と呼ばれる)、4m滝、6m滝、8m斜瀑(水流左側の垂壁部分を登る、残置シュリンゲあり)と滝が連続し、沢登りの楽しさを満喫させてくれる。ところがいきなり堰堤が現れて興ざめする。核心部はここまで。この後は滝のスケールが減少してしまう。それでも小滝を越えながらの沢歩きは気持ちが良い。入渓後、3時間ほどで二俣に出る。坊主ヶ滝を捲いた場合でも初心者がいる時はザイルを持参した方が良い。

 

                     坊主川溯行図

 

            坊主川下部・坊主ヶ滝

 

           坊主川下部・10m2段滝 1

 

              坊主川下部・5m斜瀑 2

 

          坊主川下部・10m斜瀑 2(滑り台)

 

            坊主川下部・6m滝

 

             坊主川下部・8m斜瀑

 

b.  坊主川左俣コース解説 
 左俣へ入り、変化の無い沢筋を詰めていくと、10分程で右から沢が合流する。この沢が、左股の右俣である。さらに詰めていくと10分程で右から沢が2mの滝を成して合流する。これが左股の中俣、水量からすると左股の本流と言える。左股の中俣に入らずにさらに真っ直ぐの方向が左股の左俣。所要時間、各沢筋とも、二俣から縦走路まで1〜1.5時間。

・左俣の右俣 Cランク                                      下部は傾斜が緩く滝も出てこないが、上部では小さいながらも結構滝が続く。坊主川上部では最も面白い沢筋と言えるかも知れない。

・左俣の中俣 Bランク                                       出合いから30分程で二俣に出る。右の沢筋(左俣の中俣の右俣)は滝も少なく溯行価値は無い。左の滝となって合流する沢筋(左俣の中俣の左俣)は50mに及ぶ滝を擁し、そのスケールに目を奪われる。ただし、水流が無い事も多く、これを滝と呼ぶことに躊躇を覚えるが、水流さえあれば快適な斜瀑なので、一応、滝としておこう。おそらくは背振山塊北面の沢としては最大の高度差を有する滝である。出合いの6m滝は簡単に登れる。50m斜瀑も技術的には問題ない。ただし、途中でスリップすると大事故に繋がりかねないので、初心者がいる時は、ザイルを使用すべきであろう。途中にはピンが無いが、中型のカム、灌木が使える。これを越えると小連瀑帯が続き、その上は稜線まで何も出てこない。

・左俣の左俣 Cランク                                        左俣の左俣に入って10分程度でまた沢が二筋に分かれる。左の沢筋は906m峰と西山とを繋ぐ稜線上に出てくる。ほとんど沢の形状を成しておらず、踏み跡伝いに稜線上に達する。所要時間30分。右の沢筋は縦走路まで繋がっているが滝も少なく興味は無い。

 

         坊主川左俣の右俣・10m斜瀑

 

           坊主川左俣の中俣・出合いの2m滝

 

        坊主川左俣の中俣の左俣・50m滝

 

          坊主川左俣の中俣の右俣・5m滝

 

           坊主川左俣の左俣・7m斜瀑

 

c.  坊主川右俣コース解説 C ランク
 こちらが坊主川本流に当たり(右俣の右俣が本流)、途中でいくつかの小沢を分岐しながら金山付近に突き上げる。ひょっとして大きな滝があるかも知れないと思い、しつこく各分流を溯行してみた。しかし、登った限りでは何れの沢筋も滝の数、スケール共に貧弱で、面白さは感じられなかった。どの分流を溯行しても、同じ様な退屈な登りであるから詳しい解説は省略する。溯行に当たっては坊主川溯行図を参照されたい。所要時間、二俣から1時間。

 

             坊主川右俣の中俣・5m滝 1

 

            坊主川右俣の左俣・6m滝

 

d.  坊主川一の沢コース解説 A ランク                               規模が小さく、水量も少ないが、滝の密度は背振山系北面随一ではないだろうか。滝の全てが直登出来るので、初心者に対して滝登攀の経験を積ませるには最適な沢である。もう少し溯行距離が長ければ文句なしなのだが。坊主川橋を渡った所から、右にコンクリートの車道が延びているのでこれをたどる。40m程で左からの小さな沢に出会う。これが一の沢である。普通の感覚ではとても入渓する気になれない小ささである。沢に入ると直後から滝が連続し、次々とシャワークライムを交え越えていくのは爽快で楽しい。私好みの沢である。初心者がいる場合は、三つ道具必携。水流が無くなった後、西山まで結構長いので、滝群が終わった辺りから左の尾根に逃げて、踏み跡を下った方が良いだろう。所要時間、出合いから滝群終了点まで2時間。さらに西山まで1時間。

e.  坊主川二の沢コース解説 B ランク                               規模が小さく下部は沢登りと言うより、ルンゼ登攀と言った方がぴったり来る沢である。初心者がいる場合は、三つ道具必携。10m斜瀑(滑り台)の上で二の沢が合流するが水流が少なく、分かりにくいので注意(写真を参照)。沢筋はすぐに小滝の連続と成り、この部分は傾斜が急なので結構岩登り気分が味わえる。300m程で傾斜が落ち、この上は平凡な沢筋となる。後は6m滝が二つ出てくるだけ、間もなく稜線に飛び出る。そこから適当に樹林帯を下る。沢屋さんの評価はCランクだろうが、独断と偏見により登攀的要素を重く見てBランクとする。所要時間、出合いから稜線まで2時間。

f.  坊主川三の沢コース解説 B ランク                               本流を詰めていくと最初の堰堤の下で左より小沢が合する。これが三の沢である。滝の数は多くないが、結構面白い溯行が楽しめる。5m滝 1、15m滝1、15m滝2(両者とも下から見ると8m程度に見える)の登攀はかなり難しいので(いずれの滝もボルト、ハーケンが残置してあるが、15m滝2の中間部が特に悪い)、岩登りの経験が乏しいと直登するのは無理であろう。三つ道具必携。最後は稜線に突き上げる。ここから西山に出て踏み跡を下るのが最も楽な下山コース。ただし、地図、コンパス、GPSが無いと、西山まで行き着けないかも知れない。どう仕様も無くなったならば、強引に北に向かって尾根筋を下る。 所要時間、出合いから西山まで3〜4時間。

       

             坊主川一の沢、二の沢、三の沢溯行図

 

          一の沢・6m滝 1

 

          一の沢・4m滝 1

 

               二の沢出合い

 

          二の沢・6m滝 1

 

          三の沢・5m滝 1

 

               三の沢・15m滝 1

 

             三の沢・15m滝 2

 

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